2015年10月28日

◆ 東野圭吾「天空の蜂」

 東野圭吾の小説「天空の蜂」を読んだ。原発を扱うサスペンス小説。 ──

 この本は、原発を扱うサスペンス小説。(原発を爆破するぞ、と脅迫する犯人の話。)
 最初に読んだのは、十年以上前。
 2011年に原発事故が発生して、その後にも読んだことがある。
 2015年秋になって、映画化されたので、また読み直してみた。
 それで、感想を書く。



天空の蜂 (講談社文庫)



 実は、感想そのものは、前に読んだときに、あらましを書いておいた。(下書き原稿ふう。)
 そのあと、ほったらかしにしておいたが、そのときと今回とで、感想は同じだ。
 基本的には、あまり面白くない。東野圭吾の小説は、ストーリーに緊迫感があるものだが、この小説は例外的で、緊迫感が薄い。どちらかというと、ドキュメンタリーを読んでいるような感じがある。というのは、「原発とはこれこれというもので」というウンチクがいっぱい書いてあるからだ。原発の案内書でも読むような感じだ。
 とはいえ、素人っぽい話ではなくて、原発の内部の詳しい話がある。これは相当、プロに取材したな。私の知らないような細かな専門的知識がいっぱい書いてある。その分、理系の情報量は多い。
 その一方で、解説書を読むような感じがあって、緊迫感が薄れる。あんまりおもしろくない。
 それでも、だらだら読んでいくうちに、最後の方でクライマックスに達すると、さすがに東野圭吾だ。最後の方では、緊迫感がたっぷりで、読後感は悪くない。充実感もある。(どんでん返しを読んで、だまされた、という快感もある。その意味では、推理小説らしさも十分にある。)

 ──

 小説としての評価は、どうか? 

 (1) 「楽しく読むエンターテインメント」としてなら、かろうじて合格点というところか。普通の推理小説家の作品よりは上だが、傑作をたくさん描く東野圭吾のなかでは、面白さは劣る部類だ。ずいぶん長い小説の割には、ダラダラと緊迫感の薄い場面が続く。

 (2) 「社会を啓蒙する教養書」としてなら、満点以上だ。120点とか 200点とか、ウルトラ級の点数を上げることができる。なぜなら、原発事故の前に、原発事故の危険性について啓蒙していたからだ。この小説を、安倍首相(第一期)が読んでいたら、福島原発にまともに対策を取っていただろう。そうすれば、原発事故は起こらなかったはずなのだ。
 当時の国会答弁を引用しよう。
1-5
Q(吉井英勝):海外では二重のバックアップ電源を喪失した事故もあるが日本は大丈夫なのか
A(安倍晋三):海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない

1-6
Q(吉井英勝):冷却系が完全に沈黙した場合の復旧シナリオは考えてあるのか
A(安倍晋三):そうならないよう万全の態勢を整えているので復旧シナリオは考えていない 
( → 安倍晋三のデマ(海水注入の中止)

 安倍首相(第一期)は、まさしく原発事故の張本人だ。そして、彼がそうならないための知識は、まさしく「天空の蜂」で警告とともに示されていたのである。何という予言に満ちた書籍だろう。

 ──

 この小説は、こういうすばらしさがある。そこで、「東日本大震災のあとでなら、映画化されるといいな」と思ったが、どうせ誰もが思うだろうから、私は特に何も言わなかった。
 その後、映画化されて、本年になって公開された。







 映画の評判は、とてもいいようだ。
  → Yahoo!映画
  → 天空の蜂(2015)の映画レビュー(感想・評価)| Filmarks
  → 日刊ゲンダイ| 東野圭吾原作「天空の蜂」の衝撃度
  → 超映画批評「天空の蜂」95点(100点満点中)
  → 文句なしに今年最高傑作!天空の蜂のネタバレ含む感想

 映画だと、小説みたいにダラダラした長い筋もないし、原子力発電についての専門的な解説もないし、緊迫感が続くようだ。
 面白さの点で言えば、映画の方が上であるようだ。
 ただ、啓蒙性で言えば、もちろん書籍の方が上だ。理系の人なら、原発の知識を得るためにも、書籍を読んだ方がいいだろう。
 「読んでから観るか、観てから読むか」というキャッチフレーズが流行ったこともありました。


posted by 管理人 at 23:24| 書評 | 更新情報をチェックする
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