2013年02月08日

◆ 小林秀雄の「真贋」「鐔」

 小林秀雄の「真贋」という著作がある。(センター試験に出た「鐔」を含む。)
 これを読んだので、簡単に紹介する。 ──

 2013年センター試験の国語で、小林秀雄の「鐔」(つば)という随筆が取り上げられた。この問題については、下記項目で論じた。
  → Open ブログ: 2013年センター試験・国語は悪問

 センター試験についてはそちらを読んでもらうことにして、この随筆そのものについて論じよう。

 この本は、下記の書籍に所収されている。
 

        

小林秀雄「真贋」    小林秀雄全作品〈19〉真贋


 初出は 1962年(昭和37)6月号の芸術新潮だが、単行本は「真贋」である。これは絶版となったが、のちに全集に収録された。
 私としては単行本の方を中古で購入した。というのは、次のことを確認したかったからだ。
 「単行本には、鶴丸透の図版が掲載されているのではないか?」
 なぜなら、国語問題の注釈には、「もともと写真が添えられてあった」というふうに、思わせぶりなことが書いてあったからだ。で、「もしかして鶴丸透の写真じゃないの?」という気がしたのだ。 

 調べてみたら……鶴丸透の写真はありませんでした。別の鐔の写真はあったけど。 (^^);

 ま、それはさておき。

 ──

 この「鐔」という随筆は、非常に素晴らしい名文だ。特に、最後の鶴丸透かし云々の箇所は素晴らしい。
 で、同じようなレベルの名文が他にも読めるのでは……と期待して、購入したわけだ。で、その結果は? 

 結果的には、一番の名文が「鐔」であるようだ。その意味で、出題者の選択は、うまかった。褒めておこう。
 他にもいくつか、優れた文章はあるのだが、「鐔」ほどではない。ただし、「買って後悔したか」というと、そんなことはない。小林秀雄の未読の名文を読むことができて、とても満足している。このような本が(中古で)千円ぐらいで読めるのであれば、文句はない。
 ただ、新刊の全集の方がいいかもしれない。というのは、収録内容が違っているらしいからだ。(ページ数も異なる。)

 実を言うと、単行本の「真贋」には、「無常ということ」「実朝」のような、文庫本に収録された随筆も収録されている。私の持っているのは、角川版の文庫だが、「無常ということ」「実朝」などは、文庫本に収録されている時点で、すでに読んでしまったものだ。その意味で、本書の半分は、既刊の文庫本とダブっている。その意味で、実質的なコストは、倍になる。(というか、収録物が半分なので、単価が倍になる。総額は倍にはならない。)

 それでもまあ、小林の名文には、他のゴミみたいな作家の数十倍の価値があるから、買って損ではありません。私としては、「もっと早く買いたかった」というところだ。
 ただ、その意味では、このような「埋もれた名文」を発掘してくれたセンター試験の出題者に、大いに感謝したい。ここ十年ぐらいは、ろくに名文を読んでいなかった(読み尽くしてしまった)が、思いもしないところから、ひょんな形で、名文が現れてくれた。
 ただ、その一番の名文は、鶴丸透の箇所だから、センター試験の問題文を読んだ時点で、すでに読んでしまっているんですけどね。

 ま、名文をたくさん読みたい人は、上記の本を買うといいでしょう。あまり期待しすぎなければ、そこそこの満足は得られます。どうせ千円を払うなら、ランチに千円を払うよりは、圧倒的に素晴らしい価値がある。価値単独で言うなら、1万円を上回る。
( ※ ただし、「買うべし」と言えるのは、名文を理解できる人のみ。凡人は別です。凡人はライトノベルでも読んでいればいい。「ビブリア古書堂の事件手帖」とかね。)



 【 関連項目 】

 → 2013年センター試験・国語は悪問
 → 「無常という事」解題



 【 関連書籍 】



モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)


 Amazonの読者批評によると、
 収録作品は、順に「モオツァルト」、「当麻」、「徒然草」、「無常という事」、「西行」、「実朝」、「平家物語」、「蘇我馬子の墓」、「鉄斎1〜3」、「光悦と宗達」、「雪舟」、「偶像崇拝」、「骨董」、「真贋」の計16作。
 とのことだ。「鐔」はない。
 単行本と比較すると、単行本にある9作ぐらいが所収されていないようだ。やっぱり、単行本を買った方がいいですね。というか、両方買うべきですね。小林ファンならば。
 
( ※ 実を言うと、私の青春期には、小林秀雄の影響をすごく受けた。滅茶苦茶にすごく大きな影響を受けた。私の文章にはちょっと小林に影響を受けたところがある。)
( ※ オマケで言うと、小林秀雄の顔は、私とちょっと雰囲気が似ている。も一つオマケで言うと、次の人もちょっと似ている。 → 藤本泉 )


posted by 管理人 at 23:55| 書評 | 更新情報をチェックする
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