2012年11月26日

◆ 自己啓発本は役立つか?

 「これでビジネスに成功する」という自己啓発本は、役に立つか? ──
 
 勝間和代の本のように、「これでビジネスに成功する」という自己啓発本は、ビジネス書ではベストセラーになることが多い。では、こういう自己啓発本は、本当に役に立つか?
 「まったく役に立たないぞ、ゴミにすぎない」という批判がある。一部引用しよう。
 日本で本屋に行くと、学生さんやサラリーマン向けの「仕事とは何か?」「ライフハック」「グローバル人材になるためには」という目がチカチカする様な題名の「自己啓発書」や、世界的に有名な企業の創業者の「自伝」(いや、自慢本)が山の様に並んでいます。
 しかしそもそもそういう本にでてくる人は実生活ではあれだったり、本業がぼろぼろで業界では相手にされないから素人向けの本を書いて生活している人がいたりするんですがね。だって売れっ子だったらそんな素人向けの本を出して宣伝する必要ないんですから。営業しなくてもお客さんが来ますので。
 で、まあ何がいいたいかというと、ハーバードも戦略コンサルもガレージから操業してどう、も我々には関係ないんですよ。多分勤労人口の99.99999%には関係がない。
 だって、店屋でテレビを売ったり、バーコード禿の部長が喜ぶプレゼン資料作ったり、ルート営業やって足が臭い上糖尿の客にコピー機売りさばいたり、苦情電話を2日おきにかけてくる老人相手にするのに、ハーバードも戦略なんとかも関係ないわけですよ。
 ドラッガーがこういってるからこうだとか言ってもね、コピー機が売れなかったら部長に殴られるわけです。
 ちなみにイギリスの本屋もイタリアの本屋もドイツの本屋も、こういう本(キャリアポルノ)が全然売ってないんです。なんでないかというと、99%の人々は最初から自分もジョブスや勝間女史になれるとは信じてないし、なりたくもないし、なりたいと思う機会もないんです。別のことに金を使うんですよ。山登りとか、自家用戦車を買うとか、キャンプとか、鉄道模型とか、クリスマスの飾りを買うとか。
 欧州人は「いつか君も凄い人になれる」は偉大な嘘だとわかっているんです。
 デブはデブ、村のバカは村のバカ、ブスはブス、ゲイはゲイ、腋臭は腋臭。
 それは変えようのない事実なんです。
( → 谷本 真由美 の見解
 これを読んで、「ごもっとも、確かに真実だ」と思う人も多いだろう。
 だが、ちょっと待て。本当にそうか? 「どうせ自分には無理だ」と感じて、すっかり諦めることが正しいことなのだろうか?

 ── 

 たしかに、「この本を読んで大金持ちになる」というような夢は、現実には叶わないだろう。しかし、その夢が現実になると思っている人は、ほとんどいまい。本を読んでいる人は、自分が決して百万長者にならないと、わかっているはずだ。
 では、著者の言うように、「一時の夢を見るため」に、その本を買っているのか? 一種のヤク中なのだろうか? ま、そういう傾向も、なきにしもあらず。しかし、そう断言しきってしまうのも、ちょっと極論だ、と感じられる。勝間和代の本を読んで心酔しきっている人はたしかにおかしいのだが、かといって上記の欧州人のように、身近な生活に集中しているのが妥当だとも思えない。
 
 ここで思うのは、次の事実だ。
 「欧州の労働者は活力がない。定められた仕事だけをすればいいと思っていることが多く、自発的に何かをしようとする気概が欠ける。一方、日本の労働者は、自発的に職場で状況を改善しようとする。つまり『カイゼン』だ。これによって日本の向上は世界でも屈指の生産レベルを達成している」

 つまり、「兵は一流、将は三流」という警句が、ここでも成立している。日本の工場労働者は世界最高レベルであるが、日本の経営者は世界最低レベルだ。経営者がひどいのに、それでも日本の多くのメーカーが発展してきたのは、日本の工場労働者は世界最高レベルであったからだ。

 ひるがえって、欧州の労働者は、そんなふうに「カイゼン」なんかをしない。「やれ」と言われても、あまりやる気にならない。なぜなら、上記の筆者の言うように、自分の生活の方が大切だからだ。
 山登りとか、自家用戦車を買うとか、キャンプとか、鉄道模型とか、クリスマスの飾りを買うとか。
 そういうことに熱中している。そして、そのことで、自分の生活を充実させるが、企業のレベルは高くない。技術者レベルで言えば、欧州の技術者には優れた技術者がたくさんいるが、工員レベルで言うと、欧州の工員は自発的な努力をすることはあまりない。

 ──

 ここまで見ると、真実が見てくる。
 自己啓発本というのは、凡人が大金持ちになるために有益なのではない。凡人が少しでも物事を自分の頭で考えようとするために有効なのだ。そこに示してある事例は、決して専門的で具体的な方法ではない。
 「自動車の塗装工程で高能率な方法」
 「ラッピングを高速で行なう方法」
 「自動車セールスで成功する方法」
 みたいな専門的で具体的な方法ではない。むしろ、汎用性のある方法だ。たとえば、
 「顧客の話を徹底的に聞け」
 というふうな。そして、そういう事例を聞いて、自分の頭で考えることは、何も考えないことよりも、はるかに有益なのである。

 自己啓発本を読むことは、それを読んで、事例を真似するためではない。それを読んで、何かしらを自分の頭で考えるためである。別に、新たなアイデアを出す必要はない。どこなのブロガーみたいに「自分の頭で考える自己流の方法が大事」なんて思う必要はない。何であってもいいから、とにかく頭を使うことが大切なのだ。そして、頭を使う事例として、微分や積分なんかの数学書のかわりに、ビジネス成功者の例を示しているわけだ。そこに書いてあることは、何一つ真似することはできないだろうが、それでも本を読んで考えることは、いくらかは役立つ。
 普通の人には、学問の本は役立たない。数学書を読んでも、経済学の本を読んでも、役には立たない。かといって、萌えのライトノベルばかりを読んでも、役には立たない。(これこそ正真正銘の現実逃避本だ。) 一方、自己啓発本は、それなりに何らかの教育効果があるのだ。それは目に見えてはっきりと結果になるわけではないが、そういう本を読みながらいろいろと考えていけば、脳味噌は 10%ぐらいは活性化されるだろう。
 「たったの 10%か」
 と思うかもしれない。しかし、人々がそういう努力をすれば、それによって国民の平均的なレベルが上昇して、そのことで、国全体ではかなり大きな成果を成し遂げることができる。
 
 実際、今の中高年は、若いころから書籍をよく読んできたことが多い。だから、自己啓発本などを読むこともできる。一方、今の若い人は、自己啓発本を読むだけの識字力がないことが多い。社会人になってすら、「涼宮ハルヒ」や「俺妹」なんていう中学生向けの本を読む人が多い。それどころか「エヴァンゲリオン」や「まどか☆マギカ」なんていうアニメに夢中になっている社会人まで出る始末だ。まったく、識字レベルが著しく低下している。
 そして、こういうふうに識字レベルが著しく低下すると、思考力も低下するし、会社レベルでも競争力がどんどん落ちてくる。国家の力そのものが低下してしまう。
 中国や韓国には、「もっと金持ちになりたい」「もっと豊かになりたい」と思って、がむしゃらに勉強したり仕事したりする人々が多い。それだからこそ、これらの国は高い成長率を保っている。一方、「日々の家庭生活が大事だ」「ペットの飼育が生きがいだ」なんてことばかり考えている欧州人は、上昇志向が欠けているせいで、国全体の活力がなくなってしまっている。そのあげく、「欧州危機」だの、「慢性的に高い失業率」などに、ひどく苦しんでいる。

 人々は忘れてしまったのかもしれないが、そもそも、日本と欧州は、対等ではなかった。終戦直後の日本は廃墟も同然だった。欧州では「ローマの休日」(1953年)みたいなしゃれた生活ができていたが、日本ではいまだに廃墟から立ち直ろうとしている最中だった。
 ところがその後、半世紀をかけて、日本は欧州をしのぐほどにも発展した。それはなぜか? 現在の中高年が死にものぐるいで働いてきたからだ。そしてまた、社会の凡人レベルの人々でさえ、しきりに自分の頭を絞って状況を改善してきたからだ。その例は、「世界で最高の列車ダイヤ」や、「世界で最高の飲食業のサービス」などに見て取れる。もちろん、配管工や道路工事のレベルでさえ、こういうレベルの高さは見て取れる。それというのも、誰もが必死に誠実に努力してきたらだ。「家庭で趣味に打ち込むことが大切だ」なんて思ったりせずに。

 日本を発展させたものは、日本の大衆の高い労働意欲と知的探求心だったのである。それが戦後の半世紀、続いてきた。だからこそ日本は発展してきた。
 ところが今では、若者は引きこもりになったり、ライトノベルに夢中になったり、アニメにのめりこんだりしている。そういうことは決して日本人の識字力や知的レベルの上昇をもたらさない。彼らは、自己啓発本を読むだけの識字力もなくなってきている。難しい単語や漢字が出てくると、すぐさま放り出してしまうだろう。
 そういう状況が好ましいとは、決して言えない。

 ──
 
 結論。

 自己啓発本は、それなりに有益である。それを読むことで大金持ちになることはないし、ビジネスで大成功することもないだろう。それでも、本を読んで、自分が何をするべきかを考えることは、人間にとって成長の機会を与えてくれる。
 真に有能な人は、自己啓発本を読んだりはしない。自己啓発本を読んで大成功することなど、ありえない。それは事実だ。とはいえ、凡庸な人々にとっては、自己啓発本を読んで考えることは、それなりに思考訓練の場をもたらされるのである。それは決して、特定の仕事に役立つような即戦力ではないが、じわじわと効果が出て、あらゆる分野で少しだけ生産状況を改善するのだ。そして、そういう努力が積み重なることで、日本全体が発展していく。
 その努力をすべてやめてしまえば、日本は途上国となるしかない。自分の頭で考えようとしない国民は、自分の頭で考える国民の下僕となって働くしかない。これまでは、中国の国民が日本の下僕のような立場だった。しかし今では中国の国民が必死に勉強して努力して、急成長をなし遂げている。日本人が自ら学ぼうとする努力を失えば、日中の関係はやがては逆転するだろう。

 夏目漱石の「こころ」には、次の文句がある。
 「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」
 これをもじって言えば、次のようになる。
 「精神的に向上心のない国民は、馬鹿となる」
 そして、馬鹿となった国民は、賢明な他国民の下僕となるしかないのだ。その賢明な他国民が、中国人であるか、韓国人であるかは、知らないが。いずれにせよ、
 山登りとか、自家用戦車を買うとか、キャンプとか、鉄道模型とか、クリスマスの飾りを買うとか。
 なんてことばかり考えているようでは、馬鹿になるしかない。そんなことばかりしていると、世界最先端の国でさえ、やがては追いついた途上国に並ばれてしまう。
 社会が成長するためには、社会に活力が必要なのだ。つまり、パワーが。そして、パワーを鼓舞するためには、自己啓発本はかなり有効なのである。特に、「思考は現実化する」という本は、パワーを養うためには最適だ。
( ※ 天才的なビジネスマンには不要だが、凡人には有益だ。)
( ※ ただし、あまりのめりこまないで、という条件が付く。自己啓発本の読書マニアになってしまったら、本末転倒だ。)
 
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 [ 付記 ]
 Q 具体的にどんな有益性があるんですか? 
 A 少なくとも社会常識が付きます。次のような失敗をしなくなります。
  ・ コンサルタント業でありながら、下品な文章をネットに書く。
  ・ 女でありながら、(バイブでなく)オナホなんて書く。


 逆に言えば、このようなことを書いて、自分の品性下劣さや性的倒錯をさらさなくて済むように、自己啓発本を読んで、人格を高めるといいでしょう。

 Q 一般的にはどんな有益性があるんですか? 
 A 人生に対して積極的になれます。アニメに熱中して引きこもるかわりに、社会や人生に積極的に踏み込もうとするようになります。物事に対してポジティブになります。
 一方、物事に対してネガティブな人々もいます。そういう人は、「自己啓発本なんて下らん」と小馬鹿にしたり、やたらと下品な悪口を書いたりします。
 自己啓発本を否定する人が、どんな人柄になりがちであるかを、上記の著者は見事に体現しています。
 一方、積極的な生き方をする例については、本項の末尾の関連項目をご覧ください。
 




 ついでに、自己啓発本を紹介しておく。Amazon で評判のいいものがあるので、いくつか紹介する。

 以下では、列挙するのみだ。内容を知りたければ、Amazon の紹介を読むといい。評価はいずれも高いので、読む価値はあるはずだ。

 ※ 最初の「思考は現実化する」は、有名な超ベストセラーだ。
   「能力や金よりは意思こそが大事。意思が人生を左右する。
    逆に、諦めは人生を無意味にする」
  という趣旨のかな。ことわざにもある。
     「精神一到何事か成らざらん」
     「Where there's a will, there's a way.」
   別に間違っていない。それなりに有益である。
 


                              

 ──
 
 評伝

  

  ※ これは日本の経営者に読んでもらいたい本だ。
    少なくとも おのれの愚かさを反省するのに役立つ。
  
 ──
 
 Q 勝間和代の本は、リストにないのか?
 A ないです。



 【 関連項目 】

 上で紹介した「思考は現実化する」という本は、なかなか教訓的だ。これについては、私は前に別項で論じたことがある。サッカーの本田圭佑や長友佑都もこのやり方で成功している、というような話。

  → Open ブログ: 思考は現実化する(人生訓)


posted by 管理人 at 19:42| 書評 | 更新情報をチェックする
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