2010年02月18日

◆ 海外のミステリ

 海外の翻訳ミステリで優れているものを紹介しよう。私の選んだベスト作家選集。 ──

 先にディック・フランシスを紹介したが、それ以外に、傑作と言える翻訳ミステリを紹介する。私個人の好みもいくらかは入っているが、世評の高いものを基準に据える。(ほとんどが世界的なベストセラーばかりだ。)

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 まず、本格ミステリでは何か……と言うと、どれも紹介しない。  (^^);
 本格ミステリは、あれやこれやとあるが、たいていは古典的な作品だ。アガサ・クリスティとか、エラリー・クイーンとか、そんなあたり。これについては、いちいち私が紹介するまでもない。適当に、他のサイトで探してほしい。

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 近年の作品は、サスペンスものが優勢だ。謎解きよりも、小説としての面白さを狙ったもの。ディック・フランシスが典型で、「フーダニット」(誰が犯人か)という謎は最後まであるのだが、謎が明かされるに至る過程は、ちっとも理詰めではない。頭を使って論理を働かせる必要はなく、単に読んでいるだけで、怒濤の流れに乗せられて、あれよあれよと結末に運ばれる。激流の川下りみたいな面白さ。これが主流。
 このような系統のサスペンスもので、代表的なものを紹介する。

 (1) ラドラム

 ロバート・ラドラムの下記作品が白眉だ。世界的な大ベストセラー。面白いこと間違いなし。怒濤のアクション・サスペンス。
  → 暗殺者 (新潮文庫)
 ただし、Amazon のサイトを見てびっくり。これは絶版だ!
 どうなっているんだ、日本の現状は。過去の作品だというだけで、典型的な大傑作が入手できないとは。シェークスピアを絶版にするような絶望的な状況。唖然。
 とりあえず、他の作品を紹介しておこう。
  → ロバート・ラドラム 著作一覧
 ただし、ここにある作品がどれも傑作ぞろいというわけではなく、むしろその逆だ。ディック・フランシスは、どれもが傑作ぞろいだが、ロバート・ラドラムは、「暗殺者」だけが抜群に優れていて、他はたいしたことはない。

 (2) デミル

 ネルソン・デミルも、傑作をいくつか書いている。活劇サスペンスで、ユーモアもちょっとある。なかなか楽しい。密度も高い。傑作が多い。
 下記が代表作だ。世界的なベストセラー。
  → 将軍の娘 (文春文庫)
 ところが、これも絶版だ! 「プラムアイランド」という傑作まで絶版だ。そのくせ、「王者のゲーム」という駄作は売っている。どうなっているんだ、日本の状況は?
  → ネルソン・デミル 著作一覧

 (3) ゴダード

 ロバート・ゴダードも、私の好きな作家だ。ただし、普通のミステリとは違って、「文芸ミステリ」という位置づけ。いかにも文学っぽいミステリだ。
 これも絶版だらけかと思ったが、そうではなく、多くが入手可能だ。
  → ロバート・ゴダード 著作一覧
 いずれも傑作ぞろいだが、特に私の好みなのは、下記作品だ。
  → 永遠(とわ)に去りぬ (創元推理文庫)
 ただ、これは私の好みが強いので、Amazon のサイトで星の数を調べてから買う方がいいかもしれない。
 ともあれ、ゴダードの作品は、文芸系であって、文章の密度がとても高い。金を払う価値がある、という感じ。ページの言葉に手間暇がかかっている。全然安っぽくない。高級品という感じだ。
 とはいえ、文芸作品っぽい分、ミステリとしての傾向は薄らいでいる。アクションもない。ミステリというよりは、ミステリ的な文芸作品という感じ。

 (4) ホール

 パーネル・ホールは、ユーモアミステリ。庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」みたいな文体で、軽妙洒脱なサスペンス小説を書く。肩の力が抜けて、楽々と読める。頭を使わずに、楽々と読めるので、多くの人にお勧めできる。(文芸作品っぽい (3) とは正反対で、いかにも軽い感じ。ただし水っぽくはない。ちゃんとした文章だ。)
  → パーネル・ホール 著作一覧
 あれれ、これもまた大半が絶版だ! 絶望的。とはいえ、半分ぐらいは入手可能だ。
 どれがいいか? どれもこれも、似たような感じの作品だから、どれから読んでも大差ない。Amazon では新刊書であっても「通常2〜5週間以内に発送」ということだから、大手書店の店頭にもあまり存在しないのだろう。大手書店まで探しに出掛けて、無駄に手ぶらで帰るよりは、Amazon で発注した方が良さそうだ。

 (5) カッスラー

 クライブ・カッスラーの作品は、ミステリというよりは、冒険活劇ふうだ。ストーリーはミステリふうだが、犯罪の犯人は存在せず、一種の宝探しをやる。宝探しだから、謎はあるし、雰囲気はミステリだが、犯罪がないという意味では、通常のミステリとは違う。とはいえ、宝探しだから、わくわくする。(宝探しといっても、黄金ではなくて、見失われた核爆弾だったりするが。)
  → クライブ・カッスラー 著作一覧
 これもまた、案の定、ほとんどが絶版だ。新刊書だけはあるが、以前の分はことごとく絶版。ただし、優れているのは、以前の分だ。近年の分は、明らかに筆力が衰えている。それでもまあ、衰えは少ないし、いまだに頑張っているし、読む価値はあるが。……とはいっても、初期のころの作品の方が、いっそうお薦めできるのだが。

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 以上、たいていは絶版だ。入手するとしたら、古本屋か。しかしそれなら、Amazon の古本を買う方が早い。
 考えてみれば、Amazon では古本が入手可能だ。それを利用するのがいいのかも。

 しかし、今の日本では、まともな本を読もうとすれば、古本で買うしかない。困ったことだ。「古本屋が脅威だ」と騒ぐ前に、出版社は名作の絶版を避けてほしいものだ。
 しかし……出版者を責めるだけじゃ駄目だな。本を読まなくなった日本人全体が駄目なのかも。本を読む人が少なくなるから、ますます本を読めなくなる。IT時代というのは、いわば、自分で自分の首を絞めているようなものか。

 そのうち、時代を経て、古本さえも入手できなくなるだろう。私の場合、二十年ぐらい前に、古本屋をせっせと廻って、貴重な古本を入手したものだったが、あのようなものはもはや入手困難となっている。古本屋にさえもない。
 日本の活字文化は衰退し、日本の文化水準そのものが衰退しつつある。「IT時代は素晴らしい」なんて浮かれているのは、よほどの阿呆だけだ。

 それでも、ディック・フランシスの著作だけは、今でも新刊で入手できる。それだけが救いだろう。本項で紹介した作品は読めなくても、ディック・フランシスの作品は読めるので、そちらの方が私としてはお勧めできる。
  → 前項 (ディック・フランシス)
 
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 なお、読者のために一言。
 本項では、何人かの作者を紹介して、そのうちのいくつかは現在でも新刊として入手可能だ。しかし、その期間は長くないはずだ。いずれの作家も、初期の作品は絶版となっている。今は入手可能な新刊書も、あと何年かすれば大半が絶版となっているはずだ。「まだまだ入手可能だ」などと、甘く見ない方がいい。買いたいときに買い損ねると、後々では入手不可能だ、ということが結構ある。


posted by 管理人 at 18:48| 書評 | 更新情報をチェックする
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