2009年12月20日

◆ クライトンの新刊(パイレーツ)

 2008年に死去した マイクル・クライトン の遺作が出版された。「パイレーツ」という作品で、海賊物。 ── 

 クライトンが死去したと聞いたときには、「もう彼の作品は読めないのか」とひどく落胆したのだった。だが、もう一作、パソコンのなかに残っていたという。
 「完成作ではないのでは?」と疑ったが、実は、ほぼ完成状態で、最後の推敲が少し粗いだけ。十分に完成に近く、読者はとても楽しめるという。朝日の書評欄で、瀬名秀明(小説家)が褒めていたから、立派な出来映えであるようだ。
 よかった。ありがたい。神様のくれたクリスマスプレゼントみたいなものですね。というわけで、ここで紹介しておこう。

  → パイレーツ … 掠奪海域  (ハヤカワ・ノヴェルズ)



 以下は、著者の紹介。

 何でクライトンの本を紹介するかというと、クライトンは私の大好きな作家だからだ。 それも、普通の小説家とはまったく違う意味で。
 普通の小説家ならば、たくさんいる。歴史上、立派な小説家はいっぱいいる。しかし、クライトンはまったく毛色が異なる。彼は「理系の小説家」なのだ。それも、理系の話題を扱う新ジャンルの小説というのではなくて、理系の話題そのものを主題とした小説だ。
 こういう小説家は、たぶん、クライトンだけだろう。実際、著作にあたっては、大量の文献(専門論文を含む)を読んでいるようだし、そこいらの理系教養書よりもずっと情報が詰まっていることもある。

 その典型が、「地球温暖化」の問題を扱った、下記の本だ。
  → 恐怖の存在 上 (ハヤカワ文庫 NV ク 10-25)
  → 恐怖の存在 下 (ハヤカワ文庫 NV ク 10-26)

 この本には、「地球温暖化」という風潮に問題があることが示されている。しかも、ずっと前からだ。私があれこれと論じるよりも前から、クライトンは指摘していた。実際、私も、この本から教えられたことが多い。以前、長々と論じたことがある。
  → Open ブログ 「マイクル・クライトンと地球温暖化」

 「地球温暖化」という問題について、問題点をいろいろと知りたい人は、情報がいっぱい詰まった本書(恐怖の存在)を読むといいだろう。情報を知るためというよりは、楽しみながら、いつのまにか情報を得ている。私としては、上記の本(恐怖の存在)を特に強くお薦めしたい。

 ──

 クライトンの最も初期のころの作品には、理系丸出しという感じの作品があった。下記の本だ。
  → アンドロメダ病原体  (ハヤカワ文庫 SF (208))

 地球外の病原菌が地球を滅亡させそうだ、という話。SF 丸出しだが、とても楽しく読めた。普通の SF は敬遠する私でも、本書(アンドロメダ病原体)はリアリティが強い。理系の描写ゆえに、リアリティが強く出る。オタクの好きな空想性は低い。SF なのに、SF っぽくない。
 これは、初期の作品であり、青臭さがあるのだが、私のお好みの作品だ。理系の人向き。

 ──

 なお、SF っぽさが強く出た小説もある。物理学の「多世界解釈」というのを利用して、「並行宇宙に別世界がある」という話題を扱ったもの。
  → タイムライン〈上〉  (ハヤカワ文庫NV)
  → タイムライン〈下〉  (ハヤカワ文庫NV)

 タイムマシン物語ですね。ただし、そこに物理学の問題を絡ませて、いかにも本当っぽく書くのが、クライトンの腕の見せどころ。「タイムマシンなんかありえなーい」と論破するのは難しい。
 実は、私は、これを論破するために、超球理論を案出したのである。 (ホントかね?   (^^);  )

 ──

 クライトンの話題は多岐にわたっている。私のサイト内を検索してみたら、5年前に、クライトンについて言及しているのを見出せた。航空機事故をめぐる話題。特に読む必要はないが、とりあえず引用してみよう。
  マスコミの映像が、新事実の報道だというよりは、真実を歪めている、ということの例。(飛行機事故の報道。)
 ダグラスDC10 という飛行機がある。離陸中にエンジンが主翼から脱落する、という事故があった。その映像がたまたま撮影され、テレビに流れた。DC10 は危険だというイメージが広がった。
 しかし実は、DC10 は設計上の欠陥があったわけではなかった。事故は、航空会社の整備ミスと、操縦士の操縦ミスが、たまたま重なったことが理由だった。しかるに、マスコミの映像のせいで、客は「飛行機に欠陥がある」と誤認して、 DC10 に乗ろうとしなくなった。飛行機会社は DC10 の発注をしなくなり、以後、DC10 は一機も売れなくなった。かくて名機と呼ばれた DC10 は抹消される運命となった。(マイケル・クライトン「エアフレーム」ハヤカワ文庫。288頁&巻末解説。)
( → 泉の波立ち (2004-06-15)
 とにかくまあ、クライトンの小説は、理系の人にはいろいろと役立つ情報が詰まっている。面白くて、ためになる。亡くなってしまったのが、かえすがえすも惜しい。
 
 それでもこのたび、天国からの贈り物が届いたことを、幸としよう。




 
 《 本項で紹介した書籍 一覧 》


  → パイレーツ … 掠奪海域  (ハヤカワ・ノヴェルズ)
  → 恐怖の存在 上 (ハヤカワ文庫 NV ク 10-25)
  → 恐怖の存在 下 (ハヤカワ文庫 NV ク 10-26)
  → アンドロメダ病原体  (ハヤカワ文庫 SF (208))
  → タイムライン〈上〉  (ハヤカワ文庫NV)
  → タイムライン〈下〉  (ハヤカワ文庫NV)
  → エアフレーム―機体〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
  → エアフレーム―機体〈下〉  (ハヤカワ文庫NV)


posted by 管理人 at 09:12| 書評 | 更新情報をチェックする
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