医学の研修医を教育するには、どうすればいいか ── という問題がある。
通常、研修医は、現場ではお荷物扱いされている。医者としては半人前だし、学生にしてはおとなしくしていない。また、そばで医療を見ていたって、スキルがアップするわけでもない。おまけに、国家からは多額の給与が支払われる。ただの無駄みたいなものだ。
というわけで、たいていの病院では、研修医をもてあましている。なかには、「きちんと教育しています」という病院もあるにはあるが。( → そのサイト ) しかし、宣伝はそうだとしても、実際にどこまで頑張っているかは、おぼつかない。
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逆に言えば、研修医の側から見て、たいていの病院は非常に評判が悪い。そこで研修を受けても、ちっともスキルアップしないのだ。単にたらい回しをされているだけ。研修医の側から見ても、腹立たしい。せっかくの貴重な教育期間を無駄にされている気分だ。
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ところが、である。この本に、非常にうまい方法が紹介されている。研修医の評判が抜群だ。
→ 世界をだました男 (新潮文庫)
この本は何かというと、史上最大の詐欺師の自伝である。実話。 (^^);
主人公はあれやこれやと詐欺をするのだが、あんまり詐欺をやりすぎて、目をつけられた。そこで、ほとぼりを冷ますために、地方に引きこもった。「ここでなら警察も追って来まい」と。
何もしないで無職でぐーたらしていたが、職業を聞かれたら、「小児科医ですが、休暇を取っています」と煙に巻いていた。
ところが、近所に話し好きの医者がやってきた。「きみは小児科医だってねえ。どこの卒業なんだい?」と話しているうちに、いつのまにか、その医者の病院で働かざるを得ないハメになった。ただし、名目上の医者として勤務するだけであり、治療はしなくていいという。言葉の矛盾を避け、怪しまれないために、やむをえず、そこに勤めるハメになる。
ところが、ときどき、研修医の指導をするハメになる。しかし、主人公は、医学の知識がゼロである。研修医に教えることなんかできない。絶体絶命。
そこで、どうしたか? いつもと同じく、舌先三寸で逃れた。その方法は……
「×××××××××××××××××××××××××」
である。
そして、この方法を取ったところ、研修医から猛烈に批判を浴びせられた……どころか、逆に、ものすごく評判がよかった。 (^^)v
「他の先生と違って、この先生の指導はとてもいいね。すごく実力がつく」
と、研修医に大好評。なるほど、確かに、この方法なら実力がつくな、と納得させられる。
では、その方法は……
詳しくは上記の本を読んでください。 (^^);
……と書いたら、私も詐欺師になってしまう。 (^^);
そこで、簡単に説明すると、こうだ。
詐欺師は医者としては、何も指導できない。そこで、どうしたか?
「この患者を治療するには、どうしたらいいと思うかね?」
と研修医たちに尋ねるのだ。研修医たちは、複数いる。何人かの研修医たちが、「僕はこう思います」「私はこう思います」というふうに、各人が意見を言う。他人の意見を聞きながら、あれこれ考えるうちに、意見は集約されていく。
それらを聞いたあとで、おもむろに、
「うん、私もそう思う。その方針でやってくれたまえ」
と指導する。
こうして、研修医たちは、常に現場を踏む訓練を重ねていく。そのことで、彼らは急速に実力をつけていく。
もちろん、研修医たちが間違うことも、稀にあるだろう。その場合には、指導医が、きちんと説明するべきだ。では、その詐欺師は、どうしたか? さあ、どうしたんでしょうね? (^^);
その先を知りたければ、本を読むといいでしょう。答えはあまりにも意外だが。 (^^);
( ※ ヒントを言うと、医学的な解決ではなく、詐欺師的な解決。)
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この本は、ディカプリオ主演で、映画化もされている。
→ キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]
この映画は未見なので、私は知らないが、本の方は、とても面白い。大傑作というわけではないし、優れた小説というわけでもないのだが、詐欺師を研究したい人にとっては、とても面白い。特に、私みたいに、詐欺師のことを知りたい人には。 (^^);
ま、誰にとってもお薦めの良書というわけではないが、通好みの珍書としては、買って損はない一冊だ。値段も安いし。
プレゼン能力のない人たちは、本書の驚くべき舌先三寸の冴えを見るといいだろう。特に、本書の最後の舌先三寸は、驚異的だ。回り中を警察に囲まれた絶体絶命の窮地を、どうやって逃げ出すか? まるで手品みたいだ。それも、ただの言葉だけで。
ともあれ、詐欺師の方法をいろいろと学ぶと、研修医の教育にすら役立つ。詐欺師のテクニックに学ぶことは、とても大切だ。
※ ただしこの本は、もはや絶版です。中古でしか入手できない。
※ 映画の DVD ならば、入手は容易だ。結末もたぶん同じだろう。