この本は、英語の受験参考書としてはレベルが高すぎるようだ。ただし、英語が難しいというよりは、論理が難しい。また、文章が難解だというよりは、解説のレベルがハイレベルすぎて、馬鹿は置いてきぼりにされる。
比喩的に言えば、厳しい小林秀雄が日本語の教師になるようなものだ。それと同様の厳しさを、英文解釈の場で鍛える。
この本が「考える力」を養成するのに有益だ、という点については、次の項目で述べた。
→ nando ブログ 「考える力」 の [ 付記3 ]
また、思考力にとって言語力が必要だ、という点については、次の項目で述べた。
→ nando ブログ 「 なぜ言語力が重要か?」
また、この本がどれほどの影響を私にもたらしたかについては、次の項目で述べた。[ 重要 ]
→ Open ブログ : わが師の思い出
ともあれ、その書籍は、次のリンクから得られる。(いずれも Amazon )
思考訓練の場としての英文解釈 1
思考訓練の場としての英文解釈 2
思考訓練の場としての現代国語
※ いずれもお勧め。私も受験時代に利用した。
「私はこれで東大に合格しました」と言ってよさそうだが、……
東大に合格するためには、これによる能力は過剰すぎるかも。
東大に合格するだけなら、これほどの言語力は必要でない。
東大なんて、昔に比べて今では、結構簡単になっている。
※ どちらかと言うと大学卒業後に、「あのときの訓練は役立った」
と感じている。私の文章を読んだ人なら、上記の書物の教えに
私が忠実に従って文章を書いていることを、理解するだろう。
【 参考 】
この本を受験参考書と見なして、
「この本を読むと、大学受験に有利ですか?」
と質問する受験生がいるが、間違ってはいけない。この本は「思考訓練のための英文解釈」である。「大学合格のための英文解釈」ではない。大学受験にとって役立つかどうか、という観点から見るべきではない。
はっきり言えば、大学受験のレベルと比べて、本書のレベルは大幅に高すぎる。受験で点数を上げるための即効薬にはならないと思う。また、多大な時間を投入して、それだけの効果があるか(効率的に成果を得るか)という点からも、「受験にとって有利な本」とは言えない。
この本は、合格のための本ではなく、思考訓練のための本である。入試の点数を高めるための本ではなく、思考力を高めるための本である。その効果は、大学受験のときよりも、大学を卒業してから、顕著に現れる。
だから、即効的に点数を求める人には、この本は向いていない。入試でギリギリの合格点しか取れないような人には向いていない。逆に、入試の合格ラインよりもはるかに高い点数を求める人に向いている。
そういう人が本書を読めば、即効性はなくても、じわじわと効果が出る。大学生になってから、あるいは社会人になってから、大幅な思考力アップの効果を得ることができる。つまり、人生のトータルとしてみれば、非常に大きな成果を得ることができるだろう。(たとえ受験のときには即効性はなくとも。)
はっきり言おう。「人生の目的は金だ、富だ」と思うような実利主義の人には、本書は向いていない。一方、「人生の目的は真実を求めることだ」と思うような学究肌の人には、本書は向いている。
自分がどのタイプであるかを見極めてから、本書を手にするかどうかを決めるといいだろう。
なお、本書を読むべき時期は、いつでもいいのだが、できれば、高校3年生のころに読んでほしいものだ。大学生になってから読むのでもいいが、大学時代には、本書を自家薬籠中のものとして、本書なしに思考をすることができるようになってほしいものだ。